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日本交通株式会社代表取締役会長
川鍋一朗
日本交通

日本交通は創業84年、売上で日本最大のハイヤー・タクシー会社です。タクシー業界は、典型的な内需型・構造不況産業として、1970年以来40年以上も需要が減り続けている中、2012年に100周年を迎えます。私は、3代目として次の100年に向けて何をミッションとするのかを考え続け、ITの活用が鍵になる、そして新しいタクシー業界のあり方を創っていく必要があるという想いを強く抱いていました。 並木さんと再会したのはそんな2010年の秋でした。彼は前職マッキンゼー時代の後輩で、ゆっくりと会話をするのは久しぶりのことでした。この時のことはとてもよく覚えています。丸の内のホテルでランチを食べながら、彼は私の考えをとにかく丁寧に聞いてくれていました。偉ぶらず、コンサルタント特有の知識の押し売りや、求めてもいない議論の整理も特に行わず、「その時はどう思ったんですか?」、「どうしてその時そう感じたのでしょう?」など、質問を挟む程度でした。それなのに、どうやら自分で話しながら、自分の考えが整理されていったようなのです。ランチが終わる頃には、タクシーを「拾う」から「選ぶ」世界にしたい、ITの活用はまずできる所からすぐにスタートする、そして顧客価値の創造、つまりマーケティングを軸にタクシー業界のリーダーシップをとってゆく、そんなわたしの想いと、それを叶える解が出来上がっていました。 その日から「日本交通タクシー配車」アプリを開発する日々が始まりました。フィールドマネージメントは様々な分野で自社事業を展開していて、スマートフォンのアプリ開発もできるコンサルタントもいます。コンセプト・開発プロセスはもちろんPRも含め、ローンチ時だけでなくその後の機能改善など地上戦の細かい部分までを一緒に歩み続けてくれました。結果として、2011年1月に開始したアプリは東京を中心としたエリアだけでのサービスにも関わらず18万人のユーザーを持つサービスにまでなりました。
更に、多くのお客様からの「全国でも利用したい」というご要望と、そのサービスプラットフォームに賛同する全国のタクシー会社への解放によって、利用可能なタクシーが1万台を超える「全国タクシー配車」アプリという新しいタクシー連合を作り上げることができました。
更に嬉しかった事は、日本交通のメンバー達が大きく成長してくれたことです。並木さんはプロジェクトを進めながら、いつも私達が私たちの判断で答えを決められるように導いてくれていました。なぜなら、フィールドマネージメントがいなくなった後でも、このサービスと改革を継続できることこそが大事だと考えてくれていたからです。メンバー達はアプリが多くの賞を受賞したことでも自信がつき、自分達の価値を再認識できたことで自ら考えるようになり、そして並木さんがいなくなった後もしっかりと、事業を回し続けています。
彼はいつも3つのことを言っていました。「大きな目標を描いて(Radical Goal)、ちゃんと実行できるアクションに落としこんで(Realistic Action)、目に見える成果が出るまで一緒にやり続けましょう(Real Impact)」と。 彼と歩み始めて1年が経ち、構想作りから、実行、そして成果を出すまで共に歩んできました。彼はそれをあえて口にはしませんが、わたしはこのプロセスを経て、創業者である祖父、2代目の父にも誇れるミッションが確立できていることを感じます。日本交通ひいてはタクシー業界の未来に続く一歩が踏めている気がしています。
経営者の側で、目標を共有し、共に歩み、成功を支える並木さんの存在は、ゴルフのキャディのような存在であり、風を読んで次のショットの相談をします。またマラソンのペースメーカー走者のようでもあり、目指すべきペース配分を教えてくれます。この新しい全国のタクシーグループとのつながり、新しいお客様とのつながり、そして従業員の想いや誇りを大切に、日本交通はこれからも選ばれるタクシーの実現に向けて成果を出して行きます。その側には、いつも並木さんにいてもらいたいと思っています。